2004年8月12日木曜日

新鑑真


 「一人で中国まで船旅なんてさぞかし退屈だろうなあ」
船で中国に行く、などという話をするとこのように思われる方も多いかもしれない。それは決して間違いではないと思う。でも、ぼくは思う。時間さえ許すなら最高に贅沢で面白いのはこの船旅ではないか、と。


 僕の乗った船「新鑑真」は神戸からの出航だった。上海まで2泊3日の船の旅である。
 もちろん、キャンペーンの安い料金で乗るので船室は相部屋である。―どんな人と一緒になるんだろう。乗船手続きや出国審査を終えて船室に案内され、若干緊張した声で、
「こんにちは、よろしくおねがいします」
と、同室のメンバーに声をかける。よくいったもので、案ずるより生むがやすし。30分後には、船の中のレストランにて青島ビールで乾杯していた。僕以外の二人の学生は未成年らしいが。。。


 さて、腹も膨れて一服するといつの間にか船は瀬戸内海を進んでいる。
 船の乗客には様々な人がいた。僕が話した人だけでも、中国で化粧品をひろめて儲けてやろうという人、留学している友人のもとに遊びに行くという人、一人旅をしようという人、休暇を利用して旅行する学校の先生、日常の暮らしでは決して会うことのできない人ばかりだ。そういう人と話をするだけで新鮮である。
 退屈さ、旅行という非日常空間ゆえの開放感。
色々理由はあるのだろう。船の中では、なぜか普段よりも知らない人と口をききやすい。ともかくも、僕は船の中でいろいろな人としゃべった。




 船の中で一番親しくなったのは「奔流中国」という大学生のツアーの一行だった。このツアーには、シルクロードだとか、チベットだとかいろいろ行き先があるようだが、僕が出会ったのは内モンゴルに行って乗馬キャラバンをするという一行。40人弱のツアーだったがもともと知り合いの人は少なくほとんどが今日初めてあった人だとか。一人旅をするものから見るとみんなでわいわいがやがややっているのはうらやましい限りである。そんなわけで、夜、その一行の飲み会に強引にまざってしまった。最初の緊張はどこへやら、図々しいの極みではある。でも、みんな今日知り合った人同士だからか、すんなりと受け入れてもらえる。中には、船を下りるまで僕のことを「奔流」の人だと勘違いしていた人までいたようだ。


これは帰りの船での写真




 次の朝も、「奔流」のメンバーに対して開かれる中国語教室に混ぜてもらったり、夜は「奔流」のメンバーの一人の誕生日会をして、そのあとみんなでペルセウス座の流星群を眺めたり。あの星空のすばらしさは忘れようもない。
 
 2泊3日の旅の長さなんて全く感じなかった。


 どうやら、「奔流」の人たちは上海到着の日の夜と、次の日は自由行動らしい。誰が言い始めたのか、ということもなく、行動を共にする話が持ち上がった。まず、到着の日の夜は同室の男の子と、一人旅の女の子、「奔流」の3人、僕、で雑技団を見に行くことに。次の日はその「奔流」の3人と蘇州に一日旅行することになった。
 その後、夕方の列車で僕は西安を超え、シルクロードへの入り口蘭州へと旅立つ。


 こうして、僕の旅の出だしは非常に楽しい、幸先のいいものとなった。次の日、一気にどん底に叩き落されることになるのだが。

長江の河口は水が黄色い

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